ベルセルク作者の訃報と、サークル休止にまつわるお話

すでにご存知とは思いますが、ベルセルク作者の三浦建太郎氏が急性大動脈解離で亡くなられました。

体調悪化による休載もたびたびありましたので、突然の訃報ではありますが、個人的にはついに来てしまったか…という気持ちが強いです。

ご本人も「死ぬまでに頭の中を全て出せるのか」など完結に対する危惧を語っていましたが、本当に現実になってしまったことは残念でなりません。

 

とはいえ、数年ぶりの更新でベルセルクについて語りたいわけではありません。

この機会に、今さらではありますがサークル設立から休止に至った経緯と、現況についてまとめておこうと思ったもので。

もし読んで頂ける方がいるなら、お付き合い頂ければ幸いです。

 

 

サークル設立については以前も触れましたし、複雑な経緯もないので省きます。

「絵を描く人がもっと描きやすくなればいいな」の一心で、約60種類のペンタブ芯を一人で作ってきた、程度の話です。

ありがたいことに多くの方からご好評を頂き、さらに良いものを提供できるよう試行錯誤していました。

 

そうしたある日、いつものようにペン先の加工を始めようとして、ふと気づきました。

 

握力がない。

 

もちろんゼロではありませんが、加工の際は細いペン先を固定するために、指先で強く握る…というよりつまむ必要があります。

しっかり固定するだけの握力がなかったんですね。

 

しばらく作業続きだから、そういうこともあるだろう。

疲れのせいかな?と思い、その日は作業をやめて早めに休みました。

 

そして翌日、翌々日、一週間後、一ヶ月後…

一向に握力は戻りませんでした。

 

それどころか、最初は日常生活に全く支障がなかったのが、

だんだん茶碗を落とすようになり、

箸でものをつまむのも難しくなってきました。

うまく手に力が入らなくなり、指先に震えも出るようになります。

 

それと平行して不眠などの症状も出始め、病院ではいわゆる自律神経失調症と言われました。(正式な病名はちょっと違いますが)

 

それでも半年ほどは騙し騙し続けていましたが、そんな状態で指先の細かい作業が続けられるはずもなく、結局通販は休止する形になりました。

休止の際は多くの方にご迷惑をお掛けしました。

 

その後もしばらく症状が良くなる気配はなく、仕事を辞めることになるなど色々とありました。

今はおおむね回復しているので、そこはご心配なく。

 

そんなわけで、今は活動再開しようと思えば可能な状態ではありますが、

今のところ再開する予定はありません(イベントは出るかも)

その理由が、冒頭の訃報の話と繋がってきます。

 

 

活動休止する前から個人的に気になっていたことなのですが、

同人・商業作家さんで、体を悪くされている方がとても多いです。

自分もそうでしたが、体調を崩して休止・終了のケースが本当に多い。

 

「絵を描く人がもっと描きやすくなればいいな」からスタートした活動なので、

そういう理由で描けなくなる・読めなくなる人を見ると、とても悲しいです。

休止ならまだ可能性もありますが、亡くなってしまったら二度と続きは見られません。

 

創作する人全員が、気兼ねなく安心して創作できて、完成後も幸せでいて欲しい。

そしてできることなら、もっと作品を作り続けて欲しい。

好きなことを好きなだけ続けてもらいたい。

 

 

自分が体調を崩して、今こうして回復してから感じたのは、

自分が本来やりたいことって「描きやすいペン先を作る」ではないんですね。

 

もちろん、使いやすい道具の価値は承知していますが、

まず使う人がいないとどうしようもない。

描きやすい道具以前に、体が動かなくなったら何もできません。

 

そして何より、できあがった作品そのものも大事ですが、

作品を作った人がもっと幸せになって欲しい。

完成後でも未完でも、本人も納得できないうちに終わったら、悲しいじゃないですか。

 

今回の訃報は、ベルセルクの続きが読めない以外にも、そういう意味でも悲しい出来事だと思っています。

できることなら、そういう人を減らしたいんですね。

だから、活動方針として今モノを作るのはちょっと違うな、というところです。

 

そのような訳で、誠に勝手ながら、再販希望の方には本当に申し訳ありません。

 

 

そんなわけで、最後に自分の近況です。

 

謎の握力低下や不眠その他もろもろ、回復するきっかけになったのは、

病院の治療と薬…ではなく。

カイロプラクティックという、アメリカ発祥の骨盤や背骨の歪みを矯正する治療法です。わかりやすく言うと整体の一種ですね。

アメリカやEU諸国では、国家資格として専門のドクターが施術を行っています。

 

日本ではまだ法制化されてないので民間療法の一つですが、

昨年に資格を取って、仕事として始めました。

実際に回復しましたし、理屈も納得できるものだったので。

 

他にも、健康管理士という、文部科学省後援の健康に関する資格も取得しています。

(健康管理能力検定1級)

https://www.healthcare.or.jp/

 

肩こり、腰痛、頭痛、不眠などなど…病院で異常なしと言われた、

原因もわからないような症状でお困りの方は、

諦める前に一度ご相談下さい。

作業机・椅子の調整など、日々の色んな負担を減らしたいご相談も大歓迎です。

(相談は無料です)

 

 

最後は宣伝のようになってしまいましたが、

新型コロナが落ち着いて、また自由に同人イベントが開催されるようになる日まで、

体に気をつけて頑張っていきましょう!

それでは、今回はこの辺で。

【ステンレス芯制作サークル つくってあそぼ】C94 1日目西も−20b 参加します

というわけで冬コミぶりです。
40℃の猛暑が続いたり、夏コミ直前に台風が直撃したりと大変な夏ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
現在台風の低気圧の影響でぐんにょりしております(´_ゝ`)(気圧変化に弱い生物)
当日どんな天気になるのかまだ分からないですが、熱中症対策と雨対策はしっかりしておきましょう。

そんなわけで、台風で何事もなければ夏コミ1日目に参加予定です。
暑さで死んでるか台風の影響で死んでるかのどちらかだと思いますが、多分何とか頑張ります(´_ゝ`)

相変わらず新作とかはないです。もう少し回復すれば考えたいですが…(´_ゝ`)
それと、冬に使えなかった試し書き用のタブレットですが、
色々確認したら一応使えそうな感じなので今回も持参します。

熱中症対策は万全に!体調悪くなったら救護室へ!帰るまでがコミケです!
それでは夏コミ当日もよろしくお願いいたします。

C93 1日目東カ−36b 参加します

クリスマスイベントで開けた箱の数は22箱。周回がダルいサークル主です(´_ゝ`)
体は徐々に回復してる感じですが、冬になるとぶり返しますね。ゲームやる程度には生きています。

今でも通販希望の声を時々聞きますが、まだ再開には遠いです(´_ゝ`)
一年前は指先に力が入らず、箸を持つだけで指先プルプルしてたので
こりゃさすがに芯作るのは無理だと止めたんですが、夏以降にようやく収まってきた感じです。
とはいえ、今でも1日2〜3時間くらいしか集中力保たない(常に徹夜明けくらいボーっとする)状態なので、さすがに通販作業は無理です。日常生活にも支障があるレベル(´_ゝ`)
そういう訳で、もうしばらくはコミケ頒布のみですがご了承下さい。


そんな状態ですが、一応C93も当選しましたので参加します。
いつものお品書きはこちら(´_ゝ`)


新作はありませんが、夏と同様にロングの+2mm以外は一通りあります。
在庫が気になる方は、ツイッターもしくはメールフォームからご連絡頂ければ取り置き対応します。
28日に出発するのであまり時間はありませんが、もし必要な方はどうぞ(´_ゝ`)

それと、申し訳ありませんが今回は試し書きはないです。
いつも使ってるタブレットのバッテリーが死亡したようで…数年使ってるからね。仕方ないね(´_ゝ`)
(追記 一応タブレットは持っていくので運が良ければ使えます。使えなかったらすみません)

それでは、冬コミ当日もよろしくお願いしますm(_ _)m

C92 1日目Q-11a 参加します。

というわけでお久しぶりです(´_ゝ`)
色々とギリギリなので簡単に連絡事項だけ。

数ヶ月前から通販止めてますが、それは昨年末辺りから体調不良のためです。
ストレスとか不眠症とかそういうアレです(´_ゝ`)
仕事どころか日常生活にも支障をきたしてる状態なので、通販の方は今のところ再開の見込みは薄いです。
(ほんの少しずつ回復はしてますが、これを書いてる時点ではぐれメタルとかぐでたま状になってます)


そんな状態ですが、夏コミにはギリギリ頑張って参加する予定です。
タイトルにあるとおり、1日目Q-11a でお待ちしております。

新作もなし、それどころかステンレス芯の在庫も怪しい状態ですが、できるだけ頑張って作ります。
(作業効率1/3の上に、調子が良い日で2時間くらいしかまともに活動できないので申し訳ない)

なお、ロング芯の在庫は+2mmが切れていて、作る余裕もない状態です。
それ以外は…何とか…何とか…したい(´_ゝ`)(希望的観測)

あと、前回の冬コミまで色々起きてた嫌がらせ?ですが、今回はおそらく大丈夫かと。
(やってた連中が物理的にコミケに来れなさそうなので。法とか規約に引っかかる行為はやめようね!)

それでは、当日よろしくお願い致します。

【ステンレス芯】C91お品書き 1日目東D23b つくってあそぼ【艦これグッズ】

皆さんお久しぶりです。
11月からずっと体調崩してまして、色々とご迷惑をおかけしましたm(_ _)m

実はまだ体調悪いままですが、冬コミは何とか参加するつもりです。
冬コミ新作は(仕事も休んでるような状態なので)ないです(´_ゝ`)

というわけで、相変わらず冬コミギリギリになっての告知とお品書きです。




それと、今回はお隣の東D23a「華茶屋工房」と合同でスペースを取っています。
タペストリーやネックレスチェーンの絵を描いてくれている方のサークルです)

当日は、艦これアクセ関係を華茶屋工房、ステンレス芯関係をつくってあそぼで扱う予定です。
どっちか分からなくても、売り子さんに聞いてもらえれば大丈夫です。会計とかは別になっちゃいますが。
アクセ増えすぎたせいで、全部並べるとステンレス芯の試し書きスペースが狭すぎるんや…(´_ゝ`)(本音)

それでは、冬コミもつくってあそぼをよろしくお願いしますm(_ _)m

追記。
イムリミットで、ロング芯の一部の在庫を用意できませんでした…
製作の時間がなかっただけなので、在庫切れの際は通販からお願いします(´_ゝ`)



割とどうでもいい余談。

夏コミでうちのサークルの嫌がらせをしていた人たちに関してですが、
当日、うちの悪評を広めようと
「(頒布が許可されていない)一般参加」の人が
「(コミケの禁止事項にある)通路上でのビラ配り」で、
「他の参加者、近隣に迷惑のかかる行為」(サークルへの迷惑行為に加えて、通行の邪魔も含む)
を行うという多重の禁止行為により、即スタッフに捕まって説教食らったそうです。

さらに、説教から開放された後に別の場所でまたビラ配りを再開して、
当然ながらまた捕まってお説教その2だったそうな。

コミケの禁止事情もそうだけど、下手すると都条例とかにも引っかかってるんじゃないかなこれ。知らんけど(´_ゝ`)
それに、見本誌登録もしてない頒布物を通路上で勝手に頒布していいわけないだろうに。何のためのサークル登録&見本誌提出よ。


そして、冬コミでもまた同じようにビラ配りする予定で、艦これのビラを作ってるそうな。
(前回はラブライブだったそうな。絵師さんが元々そっち方面の人で、当然ビラの内容も分かった上で描いてます)

コミケのルールに則って頒布する分には、そんなチラシくらいどうでも良いですが、
そういう禁止行為は他の参加者への迷惑のみならず、
(法律・条例違反という意味で)コミケそのものの存続まで危うくさせかねないものということくらいは理解して頂きたいところ。

正味な話、あんたら警察にとっ捕まったの何回目よ?そんなに湾岸署で年越したいの?(´_ゝ`)

…というわけで、懲りずにまたビラ配りするらしいので、
もしそのような人物を見つけた方は、手が空いたらで構いませんので、お近くのスタッフまでご連絡いただければ幸いです。

あ、もしそのビラをうちのスペースまで持ってきてくれる方がいたら、お好きな製品1つと交換します(証拠集め)


では、そんなところで。
主は当日死にかけてるかも知れませんが、どうぞよしなに。

ネタバレ注意 映画「聲の形」感想 その4 佐原・植野との再会編

字幕付き上映も見てきました。予想通り手話の説明はないです(´_ゝ`)(知ってた)
字幕自体は聞き取れてれば必要ないですが、2回目の視聴は細かいところの演出も分かるようになるので良いですよ。
自分は2回目を見て、硝子との再会シーンで硝子が逃げ出す直前、百面相のようにいくつもの表情をしてることに気づきました(遅)
あと、原作でも分からなかった花火シーンの意義にもようやくたどり着きました。
あのシーン、花火だったから自殺を決めたのね。詳しくはそこまでたどり着いたら書きます(´_ゝ`)


いつも通り、未読の方はその1〜3を読んでからの方が分かりやすいと思います。長文注意。

ネタバレ注意 映画「聲の形」感想 その1 - つくってあそぼ
ネタバレ注意 映画「聲の形」感想 その2 小6編 - つくってあそぼ
ネタバレ注意 映画「聲の形」感想 その3 石田と西宮の再会編 - つくってあそぼ


2回目を見ていくつか気づいたことがあるので、本編に入る前に軽くその辺を。

「石田に誰かが話しかけるシーンで、キャラの後ろ姿しか見えず表情などが分からない」
という場面が時々出てきます。
(明確にこうなっている最初のシーンは、再会した西宮と会話しているシーンですね)

これも原作とは意図的に変えてある部分です。
映画は基本的に石田視点でまとめてあるので「石田と向かい合っているのにわざと表情が見えない構図にしている」のはかなり不自然なのですが、
おそらくこれは「見ている石田が表情を読み取れていない(読み取りたくない?)」ことの表現なのかなと思います。
場面によって多少ニュアンスが変わりますが、単純に気づいていないか、正面から顔を見られない気持ちか、顔のバッテンをつけたくないけれどその表情を理解することを放棄している?、辺りですね。
なお、演出の性質上、植野の後ろ姿がかなり多いです。今回の感想でも出てきます。


そんなわけで、ここからが今回の本編。

前回は硝子と橋の上で再会、ノートを落として云々(ここ忘れてましたね。PVで何度も見たのに)を終えたところまで。
なお、川に落としたノートをまた石田が拾ってくれたことは、「自分が諦めたものを何度でも石田が拾い上げてくれる」ことの象徴になります。
これがあったからこそ、別れ際に本来の笑顔で「またね」と言ったのでしょう。
ノートを落とすのはこれで終わりですが、しばらく後で同じような象徴的なシーンが出てきます。

その後は、弓弦が飛び降り写真をネット公開、それが原因で硝子と喧嘩して飛び出して、公園の遊具の中で石田に発見されることになります。
原作と多少流れが違いますが、重要な会話の内容はおおむね同じです。

一つだけ明確に違うのは、雨の中を抜け出した弓弦を石田が追いかけたシーンで、傘で弓弦の姿を隠しながら話す場面があります。
原作だと正面切って話していますが、あえて映画でこのような描写になったのは、
先程の「石田と向かい合っているのにわざと表情が見えない構図になっている」の裏パターンです。

石田が弓弦に表情を見せたくなかったし、弓弦の顔も見られなかったのは分かると思います。
ただ、このシーンで「側面から二人を見ていた視点から、わざわざ石田主観の視点に移動した」のは、
(作品全体を通して)不自然に顔を隠す、顔を見せない演出にはこのような意図があると明示するためなのでしょう。

その後、弓弦が傘を押し上げると抵抗なく顔が見える、というのも細かいながら興味深い点です。
「隠しているものを見るのは、ちゃんと見ようとすれば難しいことではない」ことをを示しているのでしょう。
もっとも、かなり先までそのようなシーンはないのですが。ありのままを見るのって難しい。


さて、弓弦シーンが終わり、ここからは佐原との再会。
佐原は尺調整の関係でかなり出番を削られて悲しみを背負ったキャラの一人です。
佐原は、硝子にとっては石田における永束のような「良いヤツ」です。
それだけではなく、永束ともまた立ち位置が違うので、気になる人はぜひ原作をお読み下さい。

石田は永束と一緒に、橋の上で硝子・弓弦と合流。
携帯を入手したのを機に、硝子の連絡先を聞こうと「誰か連絡先を知りたい人はいる?」と遠回しに言う石田。
友達なので普通に聞けば教えてくれるはずですが、連絡先を知りたい人と聞かれたら、会うどころか連絡も取れないという意味で佐原を上げるのは無理もないでしょう。石田はこうして会えていますから。
ここで佐原が出てきたのは、小6時代のクラスメートの中では比較的話しやすいこともあるでしょう。
硝子へのいじめとは直接関係なく、不登校に追い込んでしまったことを謝る意味もあります。

もっとも、ここで石田から佐原の連絡先を聞けるとは思っていません。
小6時代に連絡先を交換しているとは思えませんし、不登校になってからはさらに連絡先を知る機会は少ない。
あくまで、あえて連絡先を知りたい人を上げれば…くらいの気持ちです。

石田は少しがっかりしつつも、硝子が知りたいならと川井から佐原が通っている高校を聞き出し、硝子と共に直接会いに行きます。

硝子としては、ふと思いついて言っただけのことで、佐原の近況が分かっただけでなく、石田が直接会いに行くとは思っていなかったでしょう。
他の友達に連絡先を聞くまではありえますが、自分が会いたいわけでもないのに連絡先を聞くためにわざわざ会いに行く、という展開はさすがに想定外です。
友達とはいえ、永束ほどのビッグフレンドとまではいっていませんから。
いくら何でも、自分は何もしていないのに石田にそこまでさせるわけにはいかず、結果として硝子は一緒についていくことになります。

余談ですが、細かいところで、原作では電車から降りた後に、スタスタ進んでいく石田を硝子が一生懸命追いかける場面があります。
個人的にですが、後のとあるシーンの対比として、ここのシーンが残ってたら…と少し思っています。
夏休み中のシーンなので、おそらく意識して見返せば分かるかと思います。その辺は後ほど。

映画ではそのようなシーンはなく、駅のホームから改札に向かうエスカレーターで佐原と再会となります。
そこから最初は3人で話をしていましたが、久しぶりの再会となる硝子と佐原が喋り続け、置いてけぼりを食った石田は適当な理由をつけてその場を離れます。
(この時点で、佐原は石田が硝子をいじめていたことを知りません。不登校後の話なので)


石田が1人であてもなく街をブラブラ歩いていると、とある交差点でチラシ配りをしている少女と再会します。
黒髪ロングのツンデレ暴走系少女、植野直花の再登場です。

ここでは、石田は思いもしない再会に焦っていますが、植野側は石田に気づかなかったようにチラシ配りをするだけで終わります。
植野も石田には気づいているのですが、バイト中なのとこちらも思いがけない再会で動転したのか、気づかなかったことにしようとスルーします。
「学校が違うとはいえ、街中でたまたま知り合いが通りかかることはある」
植野も昔を気に病んでいるとはいえ、こんな急な再会では色んな意味で気持ちの整理もできません。

さて、チラシを受け取った石田は、佐原と同じように植野も、硝子と仲良くやっていた時期のように友達になれないか、と考えます。
ですが、それはかなり難しい話でもあります。
硝子が転校してきた当初こそ色々と硝子の世話を焼いていた植野ですが、それと同時に硝子に対して一番苛烈な態度も表していたからです。

石田もきっと自分のことであれば諦めていたでしょう。
ですが、もしも上手くいけば硝子に「自分が壊した本来あるべき形」を少しでも取り戻せるかも知れない。
そして、自分だけで動く分には何か被害があっても自分だけで済む。
もし失敗して自分と植野との関係が悪くなっても、もうすでにかなり気まずい関係なのだから。


そんなわけで、石田は植野のバイト先と思われる猫カフェにやってきたのだった。
ここからしばらく、植野視点から再会シーンを話していきます。

バイト先に突然現れた石田。
たしかに気づかない振りでチラシは渡したけれど、昔を考えるとそれだけで来るとは考えづらい。
たまたまチラシを貰っただけで猫カフェに来るほどの猫好きとも考えにくい。

要するに、石田は自分に会うためにわざわざやってきたのだ。
どうして急に会いに来たのかは分からないけれど、昔の知り合いとはいえバイト中に客と仕事と関係ない話をするのはまずい。
(原作から推測するに、そういうところは真面目そうな印象。硝子の世話もそうだった)

一緒にいるヤツは知らないけれど、中学以降にできた友人だろう。
できれば石田とは一対一で話したい。バイト以外の時間で。

…よし。ここは気づかれないように髪型とか変えて誤魔化そう。

デザイン科の本領を発揮して?無事にその場をやり過ごした植野は、
後日改めて下校中の石田にアタックをかけます。

しかし、植野は小6以降の石田のことをほとんど知りません。

石田がバイト先にやってきた理由も気になるけれど、「その場にいなかった」のにそんな話をいきなり切り出すのは明らかにおかしい。
昔とどう変わっているのか。今自分のことをどう思っているのか。まずはそこから確認しよう。

そこで植野は、軽い雑談ののち急な再会で混乱する石田に対して
「私のこと、嫌い?」
と問いかけます。

全編を通して植野はこういう面で非常に鋭く、自分の目的を果たすのに最適な言葉を見事に使いこなします。

過去のことを考慮すれば、ここで急に「好き」と返ってくることはまずあり得ない。
ハッキリ「嫌い」と返ってくれば、小6時代の石田からあまり変わっていないと分かり、なおかつ「バイト先に来たのは石田以外の用件があった」のだと推測できる。
嫌いな人物にカネと時間を使ってまでわざわざ会いに来る性格ではない。
「どちらでもない」等の答えであれば、昔の石田とはどこか変わり、内容によって昔のことをどれだけ気にしているかも予想できる。

そして、いきなりこの話題を振ることで、石田の本音を引き出しやすい環境も作っています。
急なことがあると上手く取り繕えないところは、出会った時の動揺で確認済み。
もし返答に時間がかかるようなら、そこにも何らかの理由が隠されているはず。
そこからあとの情報は、そこを確認してから確認していけば良い。

感想その2にて、小6時代の硝子の人間観察能力の話をしましたが、
植野も負けず劣らず観察力などが高く、硝子よりもさらに一歩深く見抜いてくるタイプです。
しかも、硝子のように観察するだけで終わらず、どんどん前に踏み込んでくるところがあります。
この発言の後も、植野のそういう強引で一種冷徹ともいえる面が表現されています。

石田の「まぁ、別に、何とも…」という煮え切らない回答から、
後者の「どこか変わってしまった」「昔のことは気にしているけれど、それで自分を嫌いになった様子ではなさそう」と判断します。
まぁ、石田が変わったとすれば、十中八九昔のことの影響だろう。
そうなると問題は、何がどう影響しているのか。
自分がその影響の中心でないのなら、残りの候補はおのずと絞られてきます。

そう考えているところに、ふと前方を見るとあの西宮の姿が。
当然、西宮は影響元として一番あやしい候補。この都合の良い偶然を使わない手はない。

そこで植野は、軽くカマかけをします。
「あの当時の自分が話していたような雰囲気」で、現在の西宮を軽くけなします。

これで石田が乗ってくるようなら、西宮は対象から外れたことになるので、
当時のことを愚痴り合いながら少しずつ探っていけば良い。
それ以外の反応なら、おそらく西宮に関係するものと分かるので、どこを気にしているのか探りながら、場合によっては西宮本人も巻き込んで…といったところでしょうか。

ですが、運の悪い?ことに、石田がプレゼントした猫のポーチをけなしたことが、石田の地雷を踏みます。
もちろん一つの可能性としては考えたでしょうが、二人の過去から想像するに、石田が硝子にプレゼントすることも、硝子がそれを受け取って使うことも考えにくい。
少し嫌な予感を覚えながらも、「どちらであっても効果的」であるが故に言ってしまったのでしょう。

そして結果は、植野にとって悪い方に出ます。
ここでの石田の返答を聞いた時点で、おおよそのところは理解したことでしょう。

ここで止めていればまだ穏便に終わったところですが、
重要なことをこんな曖昧な状態で止められる植野ではありません。
止まれないならどうするか。当然前に出ます。
結果どうなるかは薄々理解しながらも。

そして植野はにこやかに西宮に近づき、不意をついて補聴器を奪います。
石田が硝子に代わっていじめを受ける原因となった補聴器の件。
あの事件を利用して石田の最もきつい記憶をえぐり、「石田がどこまで本気なのか」を確認しに行きます。

もちろん補聴器を本当に壊す気はありません。石田が自分からやるなら別ですが。
石田が西宮をどう思っていて何をしてきたのか。
それを知るために最も手っ取り早い方法を取ったのです。

この時点で、石田が西宮に補聴器を返すところまでは想定内。
ここで植野が急に笑い始めたのは、「石田の考える今の植野のイメージ」ならどういう行動を取るか、
その候補の中から「この後の展開を見て、演技だけでは誤魔化しきれない部分を誤魔化せそうな行動」として、あり得そうで石田に気づかれなさそうなものをチョイスした結果です。
西宮までごまかせるかどうかは未知数ですが、詳しい状況まではすぐに把握できないだろうと見越しての行動でもあります。
後から気づかれたとしても、「あの」西宮なら石田に全てを話すようなことはしないでしょう。


こうして植野は、半ば分かっていながら自分にとって最大級の地雷を踏んでしまいます。
西宮と和解しただけでなく、あの石田が「西宮のために手話を覚える」ほどに変わっていたのです。

この植野の爆笑シーンも、植野は後ろ姿のみで表情などは読み取れません。
ということは、石田には内心を悟られなかったということでしょう。
ただ、原作を見るまでもなく、このときの植野の様子が尋常ではないことは明白です。
(映画では明確に触れられていませんが、植野は小6の頃から石田のことが好きだったので、その気持ちは推して知るべし。詳しくは原作をお読み下さい)


台風のように全てをなぎ倒しながら植野が去ったあと、硝子は石田に「何を話していたの」と問いかけます。
植野が補聴器を持っていたので、硝子には会話が全く聞き取れない状態です。
補聴器を奪われたこと、それを石田に手渡していたことから昔のことが関係するのは連想できますが、
さすがにそれだけではあの異常な行動に説明がつきません。
おそらく「途中から泣いているのを無理やり誤魔化している」のも気づいたでしょう。

硝子としても、植野のことは「嫌いではないし自分を理解してくれる人かもしれない」し、
「何の意味もなくあんな行動を取るようには見えない」ので、
植野と石田の両方を心配してのことでしょう。

ですが、石田としても「西宮にしたいじめの話をしていた」とか「オレが西宮と無理して友達になったと思っている」なんてことを正直に話せる状態ではありません。
これは石田にしても禁忌の話題ですからね。
そんなわけで石田は何も話さずにごまかして帰宅します。

…こんな状況で、硝子が「そういうこと」だと気づかないほど鈍いはずがありません。

自分が起こしたことなのに、二人をフォローすらできない自分に自己嫌悪しながら、硝子の中にあるカウンターがまた一つ回るのでした。
(実際に硝子が起こしたかというと微妙ですが、詳しく聞けないのでそういうことにされます)


原作では、ここからまだ植野のターンが続きますが、その辺はカットされているので省略。
この後、色々問答したあとでもう一度石田に「わたしのこと嫌い?」と聞く時の植野は必見です。
こういうところの植野は本当に強いよ、うん(´_ゝ`)(植野のこういうところは好き。あと黒髪ロング)


というわけでその4はこの辺で。

映画だと、この直後に挟まる硝子の意味深なシーンがありますが、話の区切りとしては次に入れた方が収まりが良いので次回に(´_ゝ`)
一応原作もはない描写ですが、裏設定としてあったものを採用した形のようで。
(このあたりは公式ファンブック参照)


では、次回はポニテ硝子編。
映画版では表立って見えるほぼ唯一の恋愛要素です(´_ゝ`)
ポニテだけだと他より短いので、遊園地辺りまで入るかも。

ネタバレ注意 映画「聲の形」感想 その3 石田と西宮の再会編

こっそりチタン芯の通販開始されてますが、そんなことより映画の感想だ!(´_ゝ`)(待て)

感想その1から読まないと分からないと思うので、未読の方はまずそちらからどうぞ。

ネタバレ注意 映画「聲の形」感想 その1 - つくってあそぼ
ネタバレ注意 映画「聲の形」感想 その2 小6編 - つくってあそぼ


そんなわけで、小6編が片付いたのでようやく高校時代に入れます(´_ゝ`)
硝子の性格や思考パターンは大体説明終わったので、ここからはもうちょっとテンポ良く行けると思います。


さて、高校生になった石田は学校では相変わらずボッチのまま、バイトやら何やらで補聴器代170万円を工面して、
文字通り決死の覚悟で硝子に会いに行きます。

そして、全力で逃げられます。そりゃそうだ。

この時の硝子は、突然のことで完全にパニックになっています。
原作では、しばらく追いかけっこしたところで石田が思いっきり転んで硝子が近寄ってくる流れですが、
映画では階段を登った廊下のところで、硝子がいきなりしゃがみ込んでやり過ごそうとします。
(状況が分からなくて混乱した時は動くよりもじっと待って様子を見るようなクセがあるので、その延長?)
石田も急なことで一瞬通り過ぎかけますが、すぐに気づいて話しかけます。

ここでの硝子は、大嫌い&いじめっ子の石田との再会なので相当警戒してます。
気持ちはあの取っ組み合いの大喧嘩をする直前に近いでしょうか。
あの時は突然突き飛ばされているので、状況も近いと言えば近い。

内心で臨戦態勢を整えていた硝子は、石田に捨てられ諦めてしまった昔の筆談ノートを手渡され、
さらに混乱したところに、友達になろうと「手話で」話しかけられた。


これまで小6以降の石田を見ている視聴者ならこの流れも分かりますが、
もちろん硝子はそんなこと全く知りません。

何がどうなってそうなるのか。もしかしたら何か裏があるんじゃないのか。
あのわずかな時間に、脳内に様々な疑問が浮かんでは消え、浮かんでは消え、といったところでしょう。

でも、そんな混乱の極みにいても、一つだけ硝子にも分かることがあります。


目の前にいる石田は「自分と話をするために、わざわざ手話まで覚えて会いに来た」


手話を自然に覚えるというのは考えにくい。
聴覚障害者と交流がなければ、覚える必要どころかそういう機会すら皆無でしょう。
そして、そんな交流があるのかと言うと、確率的にはほぼないと言っていい。
(日本の聴覚障害者は人口の約0.3%で、硝子と出会った時点ですでにレアケース。昔の事件を考慮すれば、たとえ交流があっても普通覚えないでしょう)

さらに、自由自在に使えるほどではないけれど、簡単な会話ができる程度には手話を身につけている。
(昔硝子が使った私・あなた・友達の単語だけを覚えていたなら、忘れ物という単語は思い出せない)


そこで、硝子は考えます。


言っていることが本当かどうかは分からない。また何かするつもりかもしれない。
昔のことを考えれば、正直気分の良い相手でもない。

でも、自分に嫌がらせをするためだけに、この筆談ノートを何年もの間取っておくだろうか。
それに、ノートを渡すだけなら手話を覚える必要もない。
嫌がらせのために覚えるにしても、あまりに労力が見合わなさ過ぎる。
それこそ、この瞬間に暴力を振るうだけで事は済んでしまう。

…今の言葉を完全に信じることはできないけれど。
…今すぐに友達だ、なんて到底思えないけれど。
…過去を許すことも、忘れることもできないけれど。

…話をしてみよう。分からないことだらけだから、まず話をしてみよう。

私に、友達になろうと伝えるため。
それだけのために手話を覚えるほどに、
「話がしたい」と言ってくれているのだから。


本当のところは想像の域を出ません。
あの時「諦めた」筆談ノートを持ってきたことと合わせて、
もう一度だけ「仲良くなりたい」と思うことにしたのかも知れません。

何にしても、こうして微妙なすれ違いにお互いが気づかないまま、二人の関係が再び始まりました。

…これ、相手が硝子じゃなかったら間違いなくここで話が終わってるよね(´_ゝ`)(本音)

実際のところ、高校時代以降は「このキャラクターだから起きた出来事」が大半で、
聴覚障害やらいじめの話は、その出来事を決定的にするための増幅装置くらいの役割になっています。
結局のところ、障害もその人を表す一側面に過ぎないので、それだけが何かの原因になることなんてそうそうないです。

とはいえ、当の本人や、周りの人たちがそう考えるかは別問題。それもまたこの作品のテーマと繋がります。


続いて、永束との出会い・ポテトをタバコに見立てて友達論を語るシーン・弓弦に追い返されるシーンを飛ばして、
橋の上での二人の会話シーンから。

正直細かい会話の内容は忘れてしまったので、原作の会話にそって話していきます。省略されてても内容はほぼ同じだったはず。

ここで石田は「会いにに行こうと思っていたけれど、昔のことを思い出すから本当に会っていいのかわからなかった。友達と言えるかどうかも分からなくなって1人で落ち込んでいた」と言い、
それに対して硝子も「同じことを考えていた」と返します。

ですが、この時の二人の脳内にあったことは、大きな違いがあります。

石田は話した通り「昔あれだけいじめておいて、急に友達なんて言っていいのか。そんな資格ないだろう」ですが、
硝子の考えていたことは、
「(いじめられたことはひとまず置いて)私のせいで石田とみんなとの関係を壊してしまったのに、向こうから言ってきたとはいえ、私が友達と呼んでいいのだろうか。いつかまたあの時のようにひどいことを起こしてしまうのではないか」
のような内容です。

普通に考えれば、硝子が「昔のいじめの主犯」に対してそんなことまで気にすることはないでしょう。
本当にそんな風に考えるとしたら、一種の狂人と言っても良いと思います。

ですが、硝子は先日、友達になってみようと決めたのです。話をしてみようと決めたのです。
それはすなわち、「いじめの主犯」という色眼鏡を外そう、と決めたことでもあります。
暫定的ながら、硝子の中では「石田=友達」と定義し直されたのです。昔のことに由来する好悪はともかく。

しかし、自分の中では石田=友達と決めたとしても、硝子自身が石田の友達として関係して良いかどうかはまた別の話です。
石田が永束を友達と呼んで良いかどうか悩んでいるのと同じですね。
永束がいくらビックフレンドと呼んでも、石田は「友達同士」の関係に自信が持てないのです。
(永束の出会いが間に挟まったのはおそらくこのため)

そしてさらに、硝子はこれまで自分が関わってきた人たちをことごとく不幸にしてきた、という自虐意識があります。

石田とは、一度だけ友達として関係をやり直すと決めた。
でも、私は今まで友達にひどいことばかりしてきた。
まして、石田にはあれだけのひどいことをしてしまった。(石田からのいじめが直接の原因とはいえ、それも元を辿れば硝子のせいという考え)
今度もまた、同じようなひどいことをしてしまうのではないか。
そんな自分が、本当にこのまま石田と関わっていいのだろうか。会う資格がないのは私の方じゃないのか。

2度目の再会までの間、こんなことをずっと考え込んでいたのではないかと思います。

そんな悶々とした気持ちのなか、石田の打ち明け話を聞いて、

あぁ、石田も自分と同じようなことを考えていたんだ。
(昔のように危害を加えるつもりがないなら)そこまで心配しなくても良かったのに。

と、「嬉しく」思ったのでしょう。
石田の言葉を信じられるようになって、少し安心したのでしょう。

当然ながら、この時の石田は硝子のように「関係を続けたら硝子をまた不幸にするんじゃないか」なんて全く考えていません。
(またいじめるという選択肢は石田にはないので、石田視点からはそもそも起こりようがない)

このように、強い自責の念があるのは二人とも同じですが、中身はかなりの違いがあります。
ですが、その気持ちのすれ違いにはお互いに気づくことなく「お互いに同じことを考えていた」と少し安心します。

直後の弓弦の呟きの通り、硝子は本当にバカですね。大馬鹿です。


なお、今後もこのようなディスコミュニケーション(相互不理解)の場面はところどころで見られます。
というより、キャラクターがぶつかるところには必ずディスコミュニケーションがあります。
ぶつかった二人の間に、どのようなすれ違いが起きているのか。よく見返してみると色々な気付きがあると思います。


こうして、ようやく気持ちの上でも「友達」になれた二人。(石田はまだ分かってませんが)
ですが、この時点ではまだ心理的には友人Aくらいの立ち位置です。
ここから硝子がポニテになるまで、どのような心情の変化があるのか。

というわけで次回は、佐原・植野との再会。

このあたりから、原作から削ったエピソードが目立ってきます。
一度で全部は覚えられないので記憶との勝負…大きいところは覚えてますが、一部削ったところでは原作とゴッチャになるかも(´_ゝ`)

ー`)。o○(…このペースだと、その10くらいまでかかるな…)